河底0メートル

いわれてみれば、たしかにきこえる

住み替える家22

リフォーム会社が決まったので、次は細部を詰めていきます。

 

家の形は長方形で、ちょっとしたウナギの寝床の3階建て。入り口からすぐ左に螺旋状に3階まで続いています。現状部屋は分かれているものの、スケルトンにするので外側だけ決まっている状態。例えると虎屋の羊羹の箱が3つ重なった形。

 

まず俎上に上がったのは3階リビングのキッチン。当初のプランでは窓に沿ってキッチンが並び、反対側がベンチになっていたのですが、料理している後ろを行き来するのは邪魔かもしれない、と考えて、L型キッチンにして奥に寄せ、対面にする事にしました。冷蔵庫を置くと通路が狭くなりますが、結果的には思ったほど狭くならずに良かったと思います。

デメリットとしてはエアコンの風がシンクに遮られて奥まで届きにくいという事でしょうか。キッチンの反対側はベランダを拡張して大きな窓にした為、その上にエアコンがつけられず、やむなくキッチン側の壁についているのですが、火を使うのでキッチンはそんなに寒くなく、逆にリビングは寒くなりがちなので、今の時期はエアコンの位置はちょっと失敗だったかなーと思います。

住み替える家21

現地調査結果を踏まえての設計図が出揃いました

 

・1社目の自然派リフォーム会社

ある意味正統派というか、普通にやったらそうなるかな、と予想していた感じでした。寝室を一段上げて下を収納にしていたのが印象的。リビングは2階で、風呂は3階。1階の店は広くなりますが、その分居住スペースは狭くなってしまうので、要望とはちょっと違ってしまいました。

 

・2社目のオシャレリフォーム会社

斬新の一言。2階の床ブチ抜いてきました。オシャレ。 お店としてはインパクト大である意味正解だと思うのですが、床を抜いているので当然居住スペースは狭くなります。かつ一階の出入口が開けっ放しだと虫が入りそう、二階の話し声が筒抜けで落ち着かない、などという奥さんの感想もあり見送り。独身や夫婦二人だけでお店に全力投球するなら相当迷ったと思います。ちなみにミニチュア模型を作ってくれたのはこの会社だけでした。あの模型、欲しかったな…。

 

・3社目の狭小住宅得意な会社

要望していた風呂一階、ベランダ拡張の提案、将来に向けて部屋を分けれるような設計など、狭小住宅を得意にしているだけに色々とノウハウが詰め込んでありました。他の会社が2階をリビングにしているのに対し、3階をリビングにして拡張したベランダに続くようになっている。今実際住んでみると2階は薄暗いですが、3階は眩しいくらい明るいので正解だったなと思います。

 

というわけで、3社目に決定。

 

住み替える家20

この時コラージュで書いた暮らしは、今となってはだいぶ違っているとは思います。しかしそれでも生活の輪郭のようなものをハッキリさせた事で、メリハリがなくなりがちな日々の暮らしを、少しだけでも理想に近づけようと考えるきっかけになりました。

「住まいを替える」という事は、「暮らしを替える」という事でもあります。賃借期限とか転勤とか漫然と引越しするのではなく、自分たちで決めて住み替えるという選択は、考えてみれば初めての事でした。その意思の部分を端的に表したのがコラージュだと考えると、あの時期はこんな暮らしを考えていたのかというメルクマールとなっています。

 

理想的な暮らしについてのコラージュを完成させてメールで送りました。現地調査の結果もお風呂一階、ベランダ拡張は可能との事なので、ここでほぼ決めていましたが、他の会社の結果も確認してから返事する事に。

住み替える家19

リフォームの相談に世田谷まで。初めて降りる駅からほど近くに事務所がありました。

最初の面談から社長がお出ましになり、まずリフォームのイメージを膨らませる為に、理想の生活を描いて欲しいとの事。好きなもののコラージュでもいいし、どういうものに囲まれて、またどういう風に暮らしたい。例として社長はキャンプが好きなのでアウトドア風味、車も好きでアルファロメオ(でも社長は持ってない)という感じで写真が色々貼り付けてあるサンプルを出されました。

そして、他の会社では難しい顔をされた「風呂を一階に」という要望も「行けると思います」と即答。さらに今ある幅50センチくらいしかないベランダを内側に拡張して広げるのはどうか、という提案。

ベランダ拡張なんて思いもしませんでした。今ベランダにある高さ1メートルに伸びた柚子の木をどうしようかも悩む必要もなくなります。

 

この時点で6割くらいこの会社にお願いしようと思ってしまいました。今まで訪れたリフォーム会社だと「設計会社」と「施工会社」が別々になっていて、できるかどうかは結局施工会社次第のところがあり、そうなると設計はあまり無理をせず余裕を持つような感じです。

面積が広ければ抽象的な設計でも後の施工で何とでも出来ますが、なにせ狭小住宅なので詰め込むだけ詰め込むしかなく、そうすると「風呂が一階」というのがかなりネックになる。しかし設計と施工が同じ会社だと、入る入らないはすぐに判断できる為、設計もかなり具体的に出来る、という感想でした

 

ここで決めてもいいくらいでしたが、コラージュという宿題をもらって帰りました。妻も私もこの手の課題は大好きなので、それぞれ作成する事になりました。理想的な暮らしとは何か、を考えるのは初めてで、普段意外と考えていないという気づきもありました。

住み替える家18

次に頼んだのは、「オシャレなリフォームといえば」という会社。リフォームセミナー後に個別相談会があるとの事で、渋谷までやってきました。

1件目の会社よりも働いている人も雰囲気が若く、活気がある感じ。担当の人は五十代くらいのクリエイター然とした方。建築確認済証や容積率の確認など、リフォームより建築基準法などにまつわる話が多く、逆に言うと客が一番気になるリフォーム内容には自信があるわけで、とにかく意識が高い感じがうかがえます。とにかく現地確認しないと進まないという事で、その日は終了。

 

1件目と2件目のリフォーム会社の現地確認の日、こちらとしては「風呂は一階でもいい」とか「階段の場所を変えたい」など、何となくの希望を伝えつつ、図面と建物のチェックをしてもらいました。

1件目の自然派リフォーム会社、鉄骨に吹き付けて

ある白いものが気になるらしく「アスベストかどうか調べたい」との事。費用もこちら持ちで五万くらいだと。これまでそんな話は全く無く、買った時にも「アスベスト検査無し」と説明されており、やる必要があるかどうか考えましたが、やっておくに越した事はないと決めお願いしました。ちなみにこの会社以外にはアスベストについて質問されなかったので、やる必要なかったかもとは思います。次は必要になるとしたら解体の時だろうし。

2件目のオシャレリフォーム会社、イケイケのイメージそのまま、担当者が酒くさいままやってきました。設計担当は若い人で、あとで検索するとやはりオシャレなリフォームの施工例がありました。2件目だった事もあり、あまり詳しくは覚えてないですが、やはり容積率や建築確認の話が多かった気がします。

 

こちらの要望は「1階に風呂と店」「2階、または3階にリビング」と言う事でした。とにかく狭いので1階は店が狭くなったとしても風呂を下に下ろして居住スペースを少しでも確保したいと。しかし「1階の店」に惑わされるのか、またはユニットバスが入らないと判断されたのか、どちらの会社も風呂は3階に持ってきそうな感じでした。

 

他にも住居に強い地元のリフォーム会社にも相談しましたが、店舗は自信がないらしくやんわりとお断りされ、次にネットで検索して狭小住宅に強いというリフォーム会社に相談して見ることに。

 

最終的にはこの会社にお願いする事になります。

 

住み替える家17

売却も決まり、買付も終わり、あとは淡々と進めるだけ。

と思いきや、中古物件なのでまだやる事があります。リフォーム。

買った物件は築20年の事務所ビル。風呂は無くシャワーのみで、2階のトイレだけが異常に立派。1階と3階に小さいシンクが付いているだけのオフィス仕様。以前商売をやりながら住んでいた人もいたようですが、独身ならまだしも家族でシャワールームは厳しい。

 

また、リフォーム会社をハシゴです。最初に行ったのは部材に使う天然素材を売りにした会社。後でネットを見ると施工が雑など結構悪評が並んでいたのですが、設計ではそれほど悪い感じはしませんでした。

とはいえ、設計と施工が別会社なので実際リフォームする段階で設計のしわ寄せが来るのでは、という仮説が後で立ちました。新築とは違い、リフォームでは壁を剥がしてみないとわからない事が多く、全て当初設計通りに行く事はほぼ無いと考えてよいです。そうすると諦めて設計を変えるか、追加でお金をかけても設計に合わせるか、という判断が都度出てきます。

予算通り、また最初の設計通りに出来ると思っていた人に、現場で「設計変わります」「追加費用かかります」と言ったら揉めるに決まってます。

 

設計までは無料との事なので、とりあえずお願いする事にしました。これで1件目。

住み替える家16

買付の書類を書く為にターミナル駅近くの事務所にいたのですが、応接室の窓から見える大交差点を眺めながら、この街に住む事になるとは思わなかったな、と感慨に浸ってました。

 

その翌日、マンション売却でお世話になっているSさんから電話。会社から二駅で駅近の物件が出たのですが見てみませんか?との事。買付の書類を出した時にSさんにも見てもらった事もあり契約状況はご存知なので、それでも連絡があったという事は条件に合っているものだと思われます。

 

その街には会社の寮があって10年ほど住んでいたので雰囲気などは十分知っているところでした。見に行くと、住んでた寮の二つ手前の道を曲がったところ。寮よりも駅に近かったのですが、飲食店や接骨院がボチボチあるだけの通りなので、ほとんど通った事がなく、あまり印象になかった所。

とはいえ、「駅近、会社近、値段手頃」と条件にピッタリ、欲を言えばもうちょっと広い方が良いのですが、そこは妥協点。築20年なので境界線の問題で断念したビルよりも新しく、リフォームしても買付を入れた新築より安く済みそう、と選ばない理由がない。

あるとすると広さに加えて、以前住んでて個人的に新鮮味がない、再開発の醍醐味が直ぐにはない、とあるのですが、それは個人の感想レベルなので飲み込んで、内覧が終わった時にはもう今の買付をキャンセルして買うのを決めてました。

 

もしSさんからの連絡がもう少し後だったら契約が進んでキャンセルしていたでしょう。不動産は本当に巡り合わせだな、と感じる瞬間でした。

先に買付をいれた不動産担当者に連絡すると、競合者がいるからか引き止める事もなく「わかりました」とあっさり。もうちょっと何とかならないのか、とは思いましたが、後腐れなくキャンセルできたので良しとします。