人は死ぬ、会社は死なない
法人税のセミナー中、貸倒引当金を説明していた講師がポツリと言った。
「人は死にますが、会社は死ぬことはありません」
個人が持っている資産は一代かぎりで、死亡すると相続税というものが掛かってくるが、会社が持っている資産は存続し続ける限り持ち続けるという事。「継続企業の前提」を説明する言葉として発された。
しかし、この言葉を聞いた瞬間に連想したのは、いわゆる「ブラック企業」だった。
人は一代限りで死に、会社はその屍の上で生き続ける。
死なない会社は人を喰らいつづける事で、継続していく。
ブラック企業にとって「継続企業の前提」とは、「人を喰らいつづける事」に他ならない。人が犠牲になることで継続できる。継続し続けることで人は喰われ続け、会社は資産を溜め込み続ける。
そうして生き延びる「会社」とは一体何なのだろうか。
例えば、起業家にとってこの言葉は希望の言葉ともなる。自分が亡くなったとしても自分が作った会社がある限り、創業者としての名が消えることはない。「継続企業の前提」とは「自らの名声が継続する事」に他ならない。継続する事で自らの名声は語り継がれる。語り継がれる間、会社は名誉を保ち続ける。
「人は死ぬ、会社は死なない」
自らの立場によって受ける印象が変わる言葉だと思う。